朝霧

2004年6月21日 読書
 先日書いた、“六の宮の姫君”と同じ北村薫の円紫さんシリーズです。
 独特の世界観はおんなじで、殺人事件の起こらないところもおんなじ。だからやっぱり読んでいてほっとする。
 確かにミステリであるから事件はおこるし、殺人事件ではないけど日常でよくあるような悪意とかすれ違いが元の出来事で、ある意味殺人よりもリアリティーがあって哀しい。皮肉な結末のものもあるけれど、それでも最後には決して押し付けがましくはない、さりげなく暖かい救いが示される。

 あと、作者の豊富な読書量に裏打ちされた文学論議も面白い。『女か虎か』・・・愛しい男が虎のいる扉か、他の女との結婚がまっている扉か、どちらか1つを選ばなければいけないとしたら、そしてその答えを王女である自分自身が知っているとしたら男にどちらを教えるかというリドル・ストーリーの話がおもしろかった。
 このストーリーに結末はないらしい。それぞれが考えるのだ。主人公の意見がおもしろい・・・「男が(王女に対して)教えてもらえると思うことが『裏切り』だ」・・・これはなんとも厳しい意見だけど女としては共感できる意見でもある。女の扉を教えても虎の扉を教えても、王女の側に心理的負担を強いることになるから。「(教えて欲しいと)こちらを見ないような男であって初めてどっちにしようって悩む」・・・潔い、けどどこか理想論的な主人公の意見。
 初めて読んだときは高校生だったけど、今はこの作品の中で就職して一年目である主人公とは同い年。不思議です・・・っていうか年とりました・・・

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Ume

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